風にのせて君へ


しまったと思って手で口を覆ったときには遅かった。


奏先輩は私を呆然と見たまま、
何も言わない。



「あ……私……」



言ってしまった。


私は恥ずかしくなって音楽室から逃げ出した。





― ― ―





星野の台詞が頭の中で繰り返される。



「俺が、雪を好き……?」



なんで星野がそんなこと、言うんだよ。



苦しそうな顔して


そんな顔して言ってんなよ。



後輩のくせに。


年下のくせに。



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