風にのせて君へ


ん?


この声。



私、とうとう悲しさで耳までおかしくなっちゃった?



「ああ……やばい……」


「おい」



もう一回、私じゃないほうの声が。


私は伏せていた顔を上げて、
声の方向を見てみる。


目を、見開いた。


なんで、いるの?



「奏先輩?」


「なんだ、その疑問系」



偶然通りかかった、と奏先輩は言った。



「雪先輩と一緒じゃないんですか?」


「何で?」



だって、と私は言う。


だって、

ピアノの音が……



「最近、雪のことばっかり言いすぎなんだよ」



呆れたように言う奏先輩。


私は返す言葉も無い。


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