風にのせて君へ
奏先輩はポツリと呟くと、
一気に私の腕を手繰り寄せて放さない。
「っ!?」
突然のことで抵抗することを忘れていた私は、
そのまま奏先輩に腕を引っ張られる。
「ちょっ、先輩!」
「“弾け”って言ってんだよ。これは先輩命令だ」
「何ですかそれ」
手を振りほどこうとは、
もう思わなかった。
それよりも、
奏先輩の熱がこんなに近くに触れて、触れて。
すごく恥ずかしいハズなのに。
放されたくないの。
自分は遠ざけていたのに、おかしいかな。
ほら、
また聞こえる。
ドクン、ドクン
って。
不安定なリズムを刻んで、
近づいていく。