風にのせて君へ


……近づく。



近づいて、近づいて、



離れることが

できなくなる。



奏先輩に手を引かれたまま、音楽室に連れてこられた私は

ドアの前で止まる。



奏先輩は急に立ち止まった私を見て、声を苛立たせて言う。



「何で止まるんだよ」



私は、足がすくんで動くことができない。



だって、
このドアの向こうには……



「何で雪のことばっか考えてるんだよ」



そう言うと、ドアを勢いよく開く奏先輩。

そのとたん、ピタリと止まるピアノの音。


いつの間にか離れていた手は私を寂しくさせる。



「雪、ちょっといいか?」



何がどうなっているのか、わからなかった。


ふう、と仕方なさそうに答える雪先輩。



「……泣かせちゃダメだからね」



そう言ってピアノから離れると雪先輩は私の横を通りすぎて、
どこかへ行ってしまった。



雪先輩が見えなくなると、奏先輩は私の手をつかんで引っ張った。



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