風にのせて君へ


あのとき……

そう、あのとき。



それは2年の春休みのこと。


周りはこの高校に合格て浮かれている、
このあいだ中学校を卒業した次の新入生。



生徒会に所属している雪から無理矢理ビラを配らされ、

その新入生が体育館へ集合しているときに
音楽室に戻ろうと思ったそのとき。


廊下をきょろきょろと見回して、

明らかに“迷子です”と言っているような、
セーラー服を着ている女子。



そのとき、俺の良心がはたらいて
その女子に声をかけていた。



「どうしたの? 説明会なら体育館であってるんじゃ……」



その女子はもじもじと恥ずかしそうに答える。



「つまらなさそうだったんで……抜け出してきちゃって……それで、迷子に……」



その台詞を聞いた、
その数秒後。



「抜け出した?」


「はい」


「つまらなさそうだったから?」


「……はい」

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