風にのせて君へ


傑作だった。


その瞬間俺は腹をかかえて笑っていた。


まず、
ここの造りをよく知らないくせに抜け出すって。


そんなに
つまらなさそうか!?

抜け出さなきゃいけないほど!?


あー、ウケる!!



「とりあえず、戻らないとヤバいんじゃない?」



一通り笑ったあと、俺はその女子に言った。


その台詞を聞いた彼女は「えー?」という顔をした。

それがまた、面白くて。



俺の負けだった。


それは
一目惚れなんていえるのかわからない。



彼女の反応が面白くて。


少し幼さを残しているのに、

新入生説明会という大切なときも
抜け出す、恐ろしく度胸を持っている。


それにまた、笑って。



だから、

入学式のとき


アイツが音楽室に入ってきたとき、



『ああ、あの子だ』



と思った。

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