風にのせて君へ


パチパチと1人分の拍手が響く。



「やっぱり、耳はいいんだな」


「“耳は”って何ですか、奏先輩」



何で、


と私は続ける。



「何で……



―――笑ってるんですかっ!!」



音楽室いっぱいに響く奏先輩の笑い声。


私に背中を向けているものの、

私を馬鹿にしているのか、
この人は。



私はじっとりとした視線で奏先輩を睨み、
笑い止まるのをじっと待つ。


どうせ何か言っても
奏先輩には届かないだろう。



「最高だ」



一通り笑った後、
奏先輩はにっと笑って言った。



「本当、爆笑するのやめてくださいよ。
あのときも、今も」


「悪い、悪い」



そうは言ってるけど、
全然素振りが悪いと思っていない。



「……もう」



私の気も知らないで。


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