風にのせて君へ
その奏先輩の仕草にドキドキしている私の肩には
いつの間にか先輩の手が置かれていて。
見惚れている、
そのうちに奏先輩の顔が近づいてて――
唇が触れた。
その事実に頭がおかしくなりそうで。
ほんの一瞬の出来事で。
でも、
間違いなく起こった……よね?
だって、感触が……
「えっ? えっ?
……え?」
“え?”を連発する私を見て、
また笑い出しそうになる奏先輩。
「返事、聴かせてやろうか?」
その台詞に私はぴたりと動きを止めて。
「聴きたい」
放課後の音楽室から、
幸せが溢れ出すようなメロディーが流れ出す。
それは
何よりも優しくて
心地よい音色だった。