優しい君の、隠れた本音
「…これって」

「去年の学祭の映像」


そこには、後夜祭が終わって、締めの花火を待つ生徒たちの姿が映っていた。


「このカウントダウンさ。本当は俺がやるはずだったんだ」

「…え?」


じゅうっ!きゅうっ!はちっ!

画面の向こうでマイクを持って叫んでいるのは、今目の前にいる笹森じゃなくて、去年卒業した3年生の先輩だった。



「最後の締めを任されたー!って、張り切りすぎちゃってさ、最後の最後に倒れたんだよね。俺」


スクリーンから目を離さずに、笹森は声を落とした。




「俺がいなくても、誰も気づかないんだ」と。



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