粗目―ざらめ―
第二章―家族
 三者面談の間、叶子は結局一言も発しなかった。

 母が滝沢高校に固執している理由はわかる。見栄だ。

(……くだらない……)


 見栄を張りたい理由はわかる。叶子の家が母子家庭だからだ。
 父親は愛人を作って、そして叶子たちでなく、その人を選んだ。叶子が小学校低学年のときだ。

 離婚の条件のひとつに、叶子と会わないこと、というのがあるらしい。だから、もう父親と会わなくなって8年近くになる。


 ……いや、5年前に一度見た。若くて、美人ではないけれどやさしそうな女性と一緒だった。

 父は叶子に気付かなかった。叶子も、声をかけようとは思わなかった。
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