粗目―ざらめ―

花火

 叶子の家は学校から遠い。通学には、バスと徒歩で一時間以上かかる。

 住んでいる場所がやや田舎だからだ。環境や、人間関係はとてもいいところだ。
 しかし、学校だけは母親の希望で、町の私立に通うことになった。学習環境による、学力の低下を心配してのことだ。


 バスを降りた叶子は母親と並んで、夜道を歩く。二人とも黙ったままだ。

 虫の声しか聴こえない、舗装されていない道。月明かりがあるとはいえ、街灯も少なく暗い。



 が、突然空が明るくなった。
 やや遅れて、爆音がした。


 見上げると夜空に大輪の花が咲いている。
 ――花火だ。
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