粗目―ざらめ―
第一章 蝉の声
 蝉の声がうるさい。



(どうせ短い命のくせに)

 何故ああも喚くのか。


(種の保存のため。子孫を残すため。
 地上に出てからの短い命の間、蝉は叫び続ける――)


 その一生に、そしてそれが脈々と受け継がれることに、一体何の意味があるのだろう。

 叶子は、じっとりと汗ばむ教室の中、ただ蝉の声を聞いていた。
< 2 / 16 >

この作品をシェア

pagetop