粗目―ざらめ―

三者面談

「――ですからね、今の叶子さんの成績では、滝沢高校は難しいとしか。蔭山学院なら――」

 中学最後の夏休み前の三者面談。要は、最後の進路指導だ。

 担任の高輪が、叶子の母に向かって喋っている。
 しかしその声は、叶子にとっては蝉の声と同じ、単なるノイズでしかない。

 目の前の高輪も、色のない写真のように……セピア色の紙人形のように見える。
 紙人形が口をパクパクさせている。

 叶子の視界も聴覚も、現実を捉えていない。当事者であるにも関わらず。


 ただ、窓で四角く切り取られた、夏の空だけは青かった。
 その鮮やかな青を、叶子はひたすら見つめていた。
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