─暴走族のお姫さま─
小さな女の子の
涙を見て俺はなぜか
ほっとけなくなった。
「来い。
お前、名前は?」
「笠原 奈美…っ
(カサハラ ナミ)」
俺は奈美を引っ張った。
その時わかった。
奈美の手は
すごく冷たくて
長いあいだ
座っていたんだろうと思った。
奈美の冷たい手を
温めるように
ギュッと握って歩いた。
溜まり場について
奈美を中に入れると
ストーブをすぐにつけて
奈美に毛布をかけた。
ガタガタと震える
奈美に俺は
何もできなかった。
「幸せって…
何なのかな…っ?」
「幸せ…?」
「あたしの幸せはね…
愛した人のそばに
いられることだったの」
温まり始めた
奈美はポツリ、ポツリと
話し始めた。