─暴走族のお姫さま─
「なんで名前知っ──…」
「無意識で名前言うくらい
好きなんだろ!!」
「──…っ」
奈美の目からは
涙が溢れだした。
「忘れようなんて思うな。
俺が…
俺が忘れさせてやるから」
目の前にいる奈美は
顔を手で覆いながら泣いていて
体は小刻みに震えていて
弱々しくて
奈美の心には壱真がいて。
全部が奈美だから
全部を受け止めるから。
俺はそって奈美を
引き寄せた。
ギュッと抱き締めると
奈美は昨日みたいに
拒まなかった。