─暴走族のお姫さま─
2人の歩く音が
聞こえる。
なんでだろう…
急に緊張してきたかも…
そっと耳を澄ますと
2人の会話が聞こえてくる。
「今日はすいません。
南谷さん」
「ええよ、ええよ。
久しぶりに奏の顔も
見れたことやし」
「どーもッス。
あの、本題なんすけど
奈菜ちゃんのことで…」
「あぁ…
偶然通りかかった道路で
泣いてたんよ。
雨も降っとったし
しかも泣いとったし…
何より女の子1人は
危ないから声かけたんよ」
「すいません。
でも拾ってくれたのが
南谷さんで助かりました。
奈菜ちゃん可愛いし
何よりも未來にとって…
GOLD DRAGONにとって
大切な子なんです」
「……っ」
一枚の戸を挟んで
向こうにいる
奏の言葉に
涙が出てきた。
今でもみんなは
あたしを待って
くれているのかな?
2人の会話は続く。
「そうなんか…
ほな、どうして
奈菜はあんな暗い道で
独りで泣いとったんや?
ちゃんと大切にしてたんか?
お前らが思ってるよりも
奈菜は弱いんや。
…奈美と奈菜はちゃうで」
──ドクン…ッ
まただ…
奈美さんという
名前に…存在に…
過敏に反応してしまう。