─暴走族のお姫さま─
「もっと…ちゃんと
奈菜を守ったれや。
奈美が強がれても
奈菜は強がれん。
奈菜だけを見ろや」
「…はい」
「お前らはいつもそうや。
何かあると
大切なものをすぐに見失う。
今回だって奈菜を
深く傷つけたやん。
いいか、覚えとけ。
取り返しのつかないことだって
たくさんあるんや。
わかったな?」
「本当にすいませんでした。
会ってもいいですか?」
「おぅ、もう奈菜を離すなよ」
「はい」
戸の向こうで聞こえた
奏の声は力強かった。
──コンコン…
「…はい」
戸がノックされて
あたしは小さく返事した。