─暴走族のお姫さま─



恐らくあたしを追いかけて
駆けつけてきたであろう
柚希があたしを抱き締めて



「奈菜…帰ろう」



「…いやっ」



離れたくないよ。



まだ未來が
戻ってきてくれるかも
しれないなんて
バカげてる。



「奈菜…」



「あたしだけだったの…っ?
こんなにも…っ
未來…を好きなのは
あたしだけだったの…?
離れてもずっと…ずっと…
想い続けてたのは…っ
あたしだけだったの?」



「……」



「あたしだけだったの…?
ねぇ…あたし…っ
どうしたらいいの……?
わかんない…っ
わかんないよ──…っ!」



「奈菜…」



全部



全部



あたしだけだったの?



胸が痛くて



張り裂けそうで



今すぐにでも
未來を追いたくて



「うわぁ──…っ」



その時。



「奈菜ちゃん…」



奏の声が聞こえた──…












< 413 / 564 >

この作品をシェア

pagetop