─暴走族のお姫さま─
奈菜は頭から血を流して
頬にも痣があって
服も乱れていて
とても見ていられなかった。
「奈菜…」
と呼ぶと奈菜はビクッと
震えて振り返った。
俺を見た瞬間。
奈菜は目からは
ブワッと涙が出てきた。
「──っ…な…いで…っ」
奈菜の消え入りそうな
小さな声が聞こえた。
「奈菜…?」
俺が声を発するとともに
一歩足を奈菜に
近づけた時だった。
「来ないでぇぇ───…っ」
奈菜の叫び声が
俺を止めた。