旦那様は社長
そんなあたしの首筋に、鈍い痛みが走る。
「オレのだってシルシ」
「……え?」
そう言って笑う社長があたしの涙を指で拭って言った。
「ほら。お前もつけろよ」
チョンチョンと自分の首を指差す社長。
「オレもお前のものだってシルシ」
「え……」
「早くしろ。女につけてくれなんて言う男、カッコ悪いだろ」
それが社長の優しさだってすぐに分かった。
あたしのこと、本当に大切に思ってくれているんだって伝わってくる。
カッコ悪くなんかない。
女のためにカッコ悪い男を演じられる男なんて、社長以外にいないよ。
「……ッ」
社長の首筋に真っ赤な痕。
「あたしだけの社長」
「当たり前だ」
だけどこの温もりも、しばらくはお預け。
「明日からでしょ?……アメリカ」
明日から社長は一週間、アメリカ支社へ会議に出席するため日本を離れることになっている。