旦那様は社長
ーー翌日。
社長はアメリカへ旅立って行った。
せっかく飛行機のチケットを手配したのに、あたしがいつまでも不安がっているためか、
『ギリギリまで側にいてやる』
と言って、けっきょく自家用ジェットで旅立った社長。
あたしは社長命令で強制的に有休を取らされ、空港に向かうまでの間、ずっと社長のいいようにされていた。
「あのエロ社長」
遥か頭上を飛んでいるジェット機を見上げながら、ポツリと呟いた。
あたしの首や腕、身体中にたくさんの“浮気防止印”がつけられている。
『寂しくないように』
とか言いながら、けっきょくはただの欲求不満なんじゃないかと、今でも疑問に思う。
それでも宣言通り、それ以上のことはしない。
“答えが出るまでは”
これを忠実に守っている社長が、逆にもどかしくてたまらなくなる。
「欲求不満はあたしの方かも」
ジェット機が空の彼方へ消えて見えなくなるまで、あたしはずっと社長を見送った。
「早く……帰ってきて」
涙が一筋、頬を滑り落ちる。
いつの間にか、あたしはもう完全に社長ナシには生きられない女になってしまったようだ。