旦那様は社長

どうして黙るの?

どうしてすぐに否定してくれないの?

早くあたしを安心させてくれる言葉が欲しい。


「ねぇ、あたし、あなたを信じていいの?今ね、もう……頭の中グチャグチャで……何を信じたらいいのか分からない」


社長のことを信じたいと思ってる。


だけど、彼女の話を聞いて揺らぎ始めてしまった。


《あと3日。……3日で日本に帰れる。そうしたら全て話すから。オレが今何を確かめようとしているのかも。……だから、それまで待っててくれないか?》


「もう待てない」


《光姫、頼むから……》


「無理だよ。……ごめんね」


あたしはそこで電話を切った。


その後も何度も電話がかかってきたけれど、あたしは逃げてしまったんだ。


「否定、してくれなかったな」


社長が何をしようとしているのかは分からない。


だけど、大河くんが悠河の子供だという疑惑を、すぐに否定してくれなかった。


それは、本当の子供かもしれないという可能性があるから。


「早く……早く帰ってきて……社長」


あたしはそのまま泣き疲れて眠ってしまっていた。


< 243 / 334 >

この作品をシェア

pagetop