旦那様は社長
「大学を卒業して数年が経った頃、友里が突然オレの前に現れた。大河を連れて。『あなたの子よ』って言われた時は驚いたよ」
「どうして彼女と結婚しなかったの?」
今の話を聞いている間に生まれた疑問をぶつける。
「うちがどんな家か、お前も知っているだろう?有栖川は日本五大名家の1つ。その次期総帥であるオレが、簡単に結婚はできないんだよ」
「え?でもあたし……」
あたしはむしろその場の勢いで決まったような気がする。
あれは何の計画性もない、ただの会長の思いつき。
「お前との結婚が許されたのは奇跡に近い。初めは驚いたよ。突然軽いノリで結婚なんて言われて。冗談だと思ったしな」
あたしだって、お金持ちの家がそんな簡単に結婚決めていいのかって、素直に思ったけれど。
「……あ、そう言えば、何であの時あんな頑なにあたしとの結婚を阻止しようとしたの?かなりムカついたんですけど」
ギュッと社長の脇腹を抓る。