旦那様は社長
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「こんばんは」
「すみません、お待たせしました」
約束の時間より5分前にホテルに着くと、既に彼女は到着していた。
「ごめんなさいね、何度も時間もらっちゃって」
「いいえ……」
あたしたちの周りだけ変な緊張感が漂っていて、カバンで隠れたあたしの手も少し震えていた。
「着いて早々申し訳ないんだけど、いきなり本題に入っていいかしら?大河を友人の家に預けているものだから」
「……はい」
あたしもこの空気から今すぐにでも抜け出したい。
「単刀直入に言うわ。悠河と、別れてくれないかしら?」
それは予想通りの言葉だった。
「大河は悠河の子供だって話はしたわよね?あの子は今、父親が悠河だってことを知らないの。あたしはあの子に悠河が父親なんだって言ってあげたいし、有栖川の後継者として立派に生きていってもらいたいの」