旦那様は社長

※※※


「こんばんは」

「すみません、お待たせしました」


約束の時間より5分前にホテルに着くと、既に彼女は到着していた。


「ごめんなさいね、何度も時間もらっちゃって」

「いいえ……」


あたしたちの周りだけ変な緊張感が漂っていて、カバンで隠れたあたしの手も少し震えていた。


「着いて早々申し訳ないんだけど、いきなり本題に入っていいかしら?大河を友人の家に預けているものだから」

「……はい」


あたしもこの空気から今すぐにでも抜け出したい。


「単刀直入に言うわ。悠河と、別れてくれないかしら?」


それは予想通りの言葉だった。


「大河は悠河の子供だって話はしたわよね?あの子は今、父親が悠河だってことを知らないの。あたしはあの子に悠河が父親なんだって言ってあげたいし、有栖川の後継者として立派に生きていってもらいたいの」


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