旦那様は社長
《また何か1人で悩んでるんだろ。オレに任せろって言ったろ?絶対お前を傷つけたりしないって》
「……うん」
《待ってろ。余計なこと考える暇ないくらい、一晩中抱きしめてやるから》
「う、うん」
《じゃあな》
離れたくない……。
出て行くのは明日にしよう。
せめて社長の顔を、もう一度だけ。
あの腕の温もりを、もう一度だけ。
あたしのさっきの強い意志が、この一瞬で揺らいでしまいそうになる。
「……ック……社長……離れたく……ないよぉ」
小さな子供のように声を上げて泣いたのは久しぶりだった。
社長が帰ってくる前に、早くここを出なきゃいけないことは分かっているのに。
“もう一度会いたい”
と何度も願ってしまう自分がいる。