旦那様は社長
光姫が悩んでいることも知っていた。
夜眠れずに1人で泣いている時間があったことも。
そんな光姫を、眠ったフリをしながらギュッと抱きしめることしかできなかったオレ。
「大丈夫だから、何も心配するな」
そんな思いを両腕の力に込めて。
「バカな女だ。勝手に決めやがって……」
オレだってもう、お前がいないと生きていけないっていうのに。
伝わっているものだと思っていた。
携帯のアドレス帳を開き、ある人物に電話をかける。
《はい……》
「オレだ、会って話したい。今からマンションに来てくれ」
《かしこまりました》
「あ、それと……光姫は暫く休暇だ。うまく人事に根回ししてくれ」
《はい》
「最後にもう1つ。例の鑑定結果を急がせろ……」
もう、オレには時間がない。