旦那様は社長

社長の声が聞きたい。

あたしはそのまま仰向けに寝転んだ。


ここは社長が一度だけ連れてきてくれた秘密の場所。


東京から車で1時間離れた場所にある、一面のレンゲソウ畑。


社長が子供の頃、亡くなったご両親とよく訪れていた思い出の場所なんだと聞いた。


あたしの真上には眩しい太陽。

そして前後左右を見渡せば、赤紫や白色のレンゲソウの花々。


目を閉じると、レンゲソウの甘い香りが漂ってきてあたしの気分をリラックスさせてくれる。


毎日が緊張の連続で、心休まることがないから。


“今日は来てくれるかもしれない”


そんな期待を抱きながら、このレンゲソウ畑で待ち続ける日々。


だけど、どんなに待っていても社長は現れない。


あれからもう一週間が経って、あたしは最近少しずつ希望を失い始めていた。


< 281 / 334 >

この作品をシェア

pagetop