旦那様は社長
そっと左手で眩しい太陽の光を遮る。
その瞬間、左手薬指がキラリと光った。
「あ……」
それは社長からもらったマリッジリング。
離婚届まで書いたくせに、どうしてもこれだけは置いてこれなかった。
どうしても……
手離したくなくて……。
けっきょく指輪は、今もあたしの左手薬指にはまったまま。
だけど……
「あたしもう……有栖川光姫じゃ……ないのかも………」
ポツンと呟くと、返ってくるはずのない言葉が聞こえた。
「お前は有栖川光姫だよ。……これからもずっと」