旦那様は社長
「……え?」
今確かに声が聞こえた。
「シカトしてんじゃねーぞ、お前」
あたしは勢いよく身体を起こすと、ゆっくりゆっくり振り返った。
「ウソ……」
どうしてここにいるんだろう。
もう、二度と会えないと思っていたのに。
「……社長……」
あれは、幻?
また夢を見ているのかと思って、両目を擦って再び目を見開いて見る。
だけど「消えない」
「当たり前だろ。ホンモノだ」
柔らかい溜め息をはいて、ゆっくりこちらへ歩いてくる社長。
一歩、また一歩と近づく度にあたしの鼓動は高鳴った。