旦那様は社長
それまで沈黙を守っていた社長が、やっと口を開く。
「会長、今日のご用件は一体……」
そうだ、あたしも完全に会長のペースに呑み込まれるところだった。
「おぉ、そうだったな。今日1日光姫さんを借りたいと思ってな。構わんじゃろ?」
「……え?」
それは一体誰に許可を取っているんですか?
どうして社長を見ているんですか?
どうして当の本人に確認しないんでしょう……。
あたし、レンタルショップのDVDじゃありませんけど。
心の中でそう突っ込みを入れたけれど、現実でそんなことを言える身分じゃないのでグッと堪えた。
「理由は何でしょうか?」
至って冷静な社長。
さすが、もうこんな生活が当たり前すぎて、何を言われても動じないんだ。と、感心してしまう。
「光姫さんには今日、衣装合わせとフルエステをやってもらう」
「……え?」
何の衣装に、何のためのフルエステだろう。