旦那様は社長
「世間的に見ればな。でもオレたちの結婚は秘密にするし、別に好きあって結婚するわけじゃないだろ?」
「それは……」
社長にとってこの結婚が、本当に“義務”にしか聞こえない。
結婚って、現実はこんなものなのかな?
少し高級感のあるレストランで夜景を見ながら食事をして。
デザートと一緒に運ばれてきた大好きなピンクレモネード。
よくよく見たら、
『あれ?これって……』
氷の中に“光るモノ”を見つけて。
目の前の彼がニッコリ笑ってこう言うの。
『光姫の残りの人生、オレにくれない?』
こんなベタベタな展開でプロポーズされるのが当たり前だと思ってた。
社長ならそんなロマンチックなシチュエーション、簡単に作り出せると思うけれど。
やっぱり女子の憧れの展開は、“夢の中だけ”の出来事らしい。
だって社長はあたしに、不倫を奨励しているのだから……。
「お互いが納得していれば不倫にはならない」
「……分かった」
「じゃあ、とっととサインしろ」
こうしてあたしは秘密の結婚をした。
誰にも知られちゃいけない。
お互いに干渉しない。
制約アリの愛のナイ結婚。
これから幾度となく、この結婚を後悔する日が訪れるなんて知らずに――……