旦那様は社長

「世間的に見ればな。でもオレたちの結婚は秘密にするし、別に好きあって結婚するわけじゃないだろ?」


「それは……」


社長にとってこの結婚が、本当に“義務”にしか聞こえない。


結婚って、現実はこんなものなのかな?


少し高級感のあるレストランで夜景を見ながら食事をして。

デザートと一緒に運ばれてきた大好きなピンクレモネード。


よくよく見たら、

『あれ?これって……』

氷の中に“光るモノ”を見つけて。


目の前の彼がニッコリ笑ってこう言うの。

『光姫の残りの人生、オレにくれない?』


こんなベタベタな展開でプロポーズされるのが当たり前だと思ってた。


社長ならそんなロマンチックなシチュエーション、簡単に作り出せると思うけれど。


やっぱり女子の憧れの展開は、“夢の中だけ”の出来事らしい。


だって社長はあたしに、不倫を奨励しているのだから……。


「お互いが納得していれば不倫にはならない」


「……分かった」


「じゃあ、とっととサインしろ」




こうしてあたしは秘密の結婚をした。


誰にも知られちゃいけない。

お互いに干渉しない。


制約アリの愛のナイ結婚。



これから幾度となく、この結婚を後悔する日が訪れるなんて知らずに――……


< 6 / 334 >

この作品をシェア

pagetop