旦那様は社長

「いい声」

あたしの耳元でボソッと囁く社長。


その色っぽい声に素直に身体が反応してしまったあたし。


「もう、離してよッ!!」


恥ずかしくてこのまま消えてしまいそうで、社長の胸をドンドンと叩いて暴れた。


きっとあたしの顔、完熟したトマトみたいに赤いと思う。


「チッ。分かったよ。……ムードねぇなぁ」


渋々と社長が抱き締める力を緩めてくれた。


「あたしたちにムードとか必要ないじゃない!!」


本当の夫婦ってわけじゃないんだし。


籍と住まいが変わるだけで、あとは他人って言ったのはそっちのくせに!!


キッと睨むと、社長がニヤリと笑った。


「その目、もしかして誘ってる?」


「はッ!?何言って……」


ーーチュッ♪


広い広いリビングに、リップ音が響く。


キョトンとするあたしと、満面の笑みの社長。


「ごちそうさま」


最後にダメ押しであたしの頬にもう一度キスをして、社長はリビングを後にした。


残されたあたしはと言うと、

「ムカつくーーーッ!!」


怒り大爆発で1人発狂していた。


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