旦那様は社長
――事の始まりは昨日。
昨日までのあたしは、ただの社長専属秘書にすぎなかった。
あたしと社長の関係も、ただの上司と部下。
それ以上でも以下でもない。
いつものように社長のスケジュールを確認し、得意先企業の社長との会食に同行。
今回の会食相手はアメリカ人で、会話はもちろん英語。
社長秘書は語学も堪能でなければ務まらない。
こういった会食や会議において、通訳をすることは日常茶飯事で。
ただ、あたしの場合は話が違う。
社長は帰国子女なので通訳の必要はなく、あくまであたしは社長の株を上げるための存在にすぎなかった。