【探偵ピート・ジャンセン】

彼女がヴァンパイアであると
認識していながら、まるで
普通の女性と同じ様に
接する事が出来る。

私は既に彼女の不思議な
魅力に惹かれている事に
心の何処かで気付いて
いたのかも知れない。


暫くして我々は
“やっと”搭乗手続きを
済ませ、機内へと
向かう事が出来た。

数時間後にはロンドンに
到着する。

ターニャは勿論、機内食を
とる事が出来ない。

これ迄は、スポーツドリンクの
ボトルにある程度保冷して
持参した“彼女の糧”を
簡単に機内に持ち込む事が
出来た。

しかし、昨今では
テロ対策の為に液体の入った
ボトルを機内に持ち込む事は
容易ではない。
（禁止事項である。）

その為に彼女はIDの提示の他
極度の潔癖性であり、
自分が持参したもの以外
口に出来ないのだと説明し、

代わりにカバーのついた
スポーツドリンクのボトルに
液体が見えない様に黒い
ストローが挿してあるものを

わざわざ係員の目の前で
飲んでみせて、

『長時間のフライトに
コレが無くちゃ
ロングフライト症候群に
なってしまうわ！』


と、少々ヒステリックに
理不尽な説得を試み、

なんとか特例を貰い、その場を
切り抜けていた。


それが“やっと”の真相だ。