【探偵ピート・ジャンセン】
サラの行方~孤独の起源


私は食事を済ませると
予めリザーブしておいた
ホテルへと向かった。

ターニャの部屋は隣の
316号室だが、まだ部屋に
戻って来ている気配は無い。


『霧が薄くなったわね‥』


彼女はそう言っていた。

以前にもロンドンを
訪れた事があるのだろうか‥

オフィスで彼女から
手掛かりとなる男の
これまた古い写真を
預かっている。

見詰められれば
眼が離せなくなるほどに
吸い込まれそうな瞳をした
男だ。

彼女達が夢中になったのも
解らなくもない。

はたしてこの男はこの街に
居るのだろうか‥

確実な手掛かりも無いままに
ただ漠然とこの街に
来たのだが‥

私が想像を巡らせていると
隣の部屋のドアを開閉する
音が聴こえた。

どうやら彼女が戻ったらしい‥

部屋を出て私は彼女のドアを
ノックした。

『ターニャ、居るのか?』

すると僅かに開かれたドアの
隙間から彼女の氷の様に
冷たい手が私の腕を掴み、

素早くドアの内側へ引き
入れると、彼女は少し
興奮気味に話し始めた。

『貴方って天才よ!

見付けたわ!彼が居たのよ!

間違い無いわ!血液バンクに
寄って戻る途中に‥

あの頃と少しも変わって
無かったわ。

跡をつけて途中、袋小路で
見失ってしまったけど…。』



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