【探偵ピート・ジャンセン】
当時のターニャは
貿易商を生業とする父
トーマス・ブラウンと
気立が良く、美しい母
ミシェールの間に生まれた
一人娘で、
父母や祖母に囲まれ、愛情を
たっぷりと注がれて
何不自由無く育って来た。
父は仕事柄、家を空ける事が
多かったが、仕事から
戻って来ると、
母や妻、年頃になった娘に
外国の珍しい土産を持って
帰って来る事を忘れない
常に家族を思う優しい父で
あった。
ある日、一年以上の滞在が
必要となる大きなビジネス
チャンスが父の元へ
舞い込んで来た。
それには取引が成立すれば、
いつ自宅に戻る事が
出来るかわからない
長期滞在が条件にあげられて
いた。
今でさえ、辛うじて
クリスマスとイースターを
家族と一緒に過ごす程度だと
言うのに、それ以上となると
流石に父にも迷いが生じて
いた。
家族を連れて行くべきか否か‥
仕事の成功は他ならぬ
家族の為。
彼はこの仕事を引き受ける
事で必ず成功させる自信が
あった。
迷った挙句、トーマスは、
家族を連れて海を渡る決意
をした。
その事に妻、ミシェールも
嫌な顔一つする事無く
同行する事に同意した。