【探偵ピート・ジャンセン】
男の様子にトーマスは
妙な胸騒ぎがしてなら
なかった。
間を置いて彼も甲板へと
向かう‥
『おい!何をしている!』
目にした異様な光景に
トーマスは声を荒らげて
足早に歩み寄ろうとした。
男は振り上げたターニャの
腕を掴み、その首筋に顔を
埋めていた。
『貴様!
娘を傷物にする気か!
娘から離れろ!』
男がその声に振り向くと
口元からは血が滴っていた。
ターニャは朦朧とする意識の
中で、父が男に殴り掛かる
姿を見た。
男はトーマスと距離を
縮めると、正面から首を掴み、
薄笑みを浮かべながら、
その骨を軋ませていった。
呼吸困難に陥ったトーマスが
男の腕を強く掴みながら
喘いでいたが、骨の砕ける
音と共に激しく顔を歪ませて
その手がスルリと滑り落ちた。
『いやああああああ!』
背後でその様子を目撃していた
ミシェールが絶叫していた。
男はその声を瞬時に
黙らせる為にミシェールの
元へ行き、抱き締めると、
激しい音と共に、か細い
彼女の腰骨を砕きながら
首筋に顔を埋めていった。