【探偵ピート・ジャンセン】
同じく顔を歪ませた
母の口角から血の雫が
流れ落ちる‥
ターニャはあまりの惨劇に
叫ぶ事すら出来ず、
フラフラと後退りながら
甲板の端へ身を寄せた。
父と母は‥?
酷たらしい現実から
逃れようと、ターニャは更に
後退った。
男が母の身から離れると
指先で口元を拭いながら
ターニャの方へ歩みを
進めた。
何処にも逃げ場の無い
ターニャは、背中に当たった
手すりを乗り越え、背後に
空虚な空間を感じながら
漆黒の夜の海に吸い込まれる
様に堕ちて行った。
それからどれ程の時間が
経過しただろう‥
照り付ける陽射しの下で
ターニャは陸地の砂浜に
独り横たわっていた。
ターニャは目覚めると
直ぐに哀しみを含んだ絶叫を
挙げた。
息を切らす程の喉の渇きが
直ぐ様、その後に続いた。