【探偵ピート・ジャンセン】
部屋に戻ると、ターニャは
たった今、目にした光景に
怯えていた。
『ターニャ‥。大丈夫か?』
『え、えぇ。大丈夫よ。
心配しないで‥
少し独りにさせて‥』
残酷なものを見せてしまった。
サラがもう以前のサラではない
とはいえ、ターニャにとっては
親友であった存在だ。
その親友の爪を焦がすのは
ジャンヌダルクの火炙りに
相当するほどのその後の
惨劇を想像させるもので
あっただろう‥。
赤ワインは別名
キリストの血と呼ばれる‥
そこで映画に出て来る
ヴァンパイアが聖水に反応
する様に、ワインが彼等に
影響を及ぼすのではないかと
考えた。
これは初めてオフィスに
ターニャが訪れた日、
うっかり勧めたワインの事を
思い出して、出て来た発想
だった。
暫くして別室に篭っていた
ターニャが出て来た。
『ターニャ‥。
済まない‥。
君を傷つけるつもりは
無かったんだ。』
『いいのよ‥大丈夫。
大丈夫だから‥
私こそごめんなさい。
サラを捜して欲しいと
貴方の所へ転がり込んだのは
私の方だし、いずれこうなる
事も予測出来ていた筈なのに‥
やらなければならない
事なのよ‥。』