【探偵ピート・ジャンセン】


その日、私はターニャを
ドライブに誘った。

この2ヶ月、昼夜逆転の生活を
していた為に私は太陽が
恋しくなっていた。

彼女にとっても気分転換に
なると良いのだが‥。


我々は、一台のレンタカーを
借りて郊外を走っていた。

突然ターニャが、車を走らせる
街並みの喧騒に紛れて今、
悲鳴が聴こえたと言い出した。


『停めて!間違い無いわ!』

彼女の聴覚は、常人よりも
遥かに聴き分ける能力に
長けている。

私は彼女の指示通り、悲鳴の
挙がった方角へ車を走らせた。

裏通りで車を停めると路地裏の
死角へ急ぐ‥

私は目の前の不気味な光景に
思わず吐き気を催した。

大きく開いた麻袋の口から
はみ出したヒト型が、
焼け焦げた匂いと共に白い煙り
を上げていたのだ。

それはやがて灰となり、
塵となって消え、跡には大きな
麻の袋だけが残った。

ターニャが聴いたのは
ヴァンパイアが日光に焼かれる
最期の断末魔の叫びだった
のだ。

たった今、ここで焼失した
ヴァンパイアは、サラ
ではない。

サラを連れ去った奴でも
無かった。

この2ヶ月の間に我々が
知り得なかった彼等の他にも
ヴァンパイアが存在して
いたのだ。



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