【探偵ピート・ジャンセン】


『ターニャ。
君は以前にもロンドンを
訪れた事があるのか?』

『あるわ‥。
ずっとずっと昔にね‥
まだ霧がミルク色をしていて
ビーンズ・スープと呼ばれて
いた頃よ‥。

サラにも会う前だった‥。

此処で私よりも永く生きて来た
ヴァンパイアに会ったわ‥。

生き血を吸うタイプの‥。

彼は私の血液の嗜好を
憐れんだわ。

「生ける者のあの甘美な味を
知らぬのは愚かだ‥」と‥

また、血の代償に永遠の時を
与える事も、永遠に葬り去る
事も可能なのだと‥

私は全能の神でも無く
同じ孤独を与える事も望まない
と言ったわ。

彼は笑って、
いずれ解る時が来る‥

そう言って目の前から
消えて行った‥。

今日がその彼を見た
最期の日になったわ‥。』

驚く事に今、目にした
ヴァンパイアは、ターニャと
過去に出会っていたのだ。

彼女が自分をこうして変えた
ヴァンパイアの行方を
追っていた頃の話しだ。

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