【探偵ピート・ジャンセン】
彼女は自分の人生を
変えてしまったヴァンパイアの
足取りを追って転々と
して来た。
彼女の両親は、彼女が
海に転落する直前にその
ヴァンパイアに殺されている。
仇でもあった。
彼女は到底勝ち目は無いと
解っていた。
ヴァンパイアとして蘇った
彼女は常人よりも遥かに
身体能力も上回っていたが
ヴァンパイアとしては男女
ほどの差があった。
彼女が例えそのヴァンパイアを
見付けたとしても、
仇を討ったところで彼女の
心の渇きに終止符が打たれる
ことは無い。
彼女は独り取り残され、
孤独に打ちのめされ、全ての
希望を失いかけていた。
そんな時だった。
ある一軒の家の窓から
幸せそうな夫婦の姿が見えた。
そこにポートマン家の
誕生して間もないサラの
姿を見付けたのだ。
自分からは失われた
生命の息吹き‥
その日からターニャはサラを
見守り続けて来た。
彼女を見る事により、幼い頃の記憶が呼び醒まされ、
波立つ心に凪の季節が
訪れていった。
物心つく前のサラに接触
した事もあったそうだ。
庭で遊ぶ彼女に近付き、
一緒に花を摘んだりしていたが
サラが言葉を発する様に
なってからは離れてただ
じっと見守るだけにしていた。