【探偵ピート・ジャンセン】
身なりの整った紳士達は
小柄で、どこかしら
狡猾そうな案内人らしき男に
促され、倉庫内に通じる
目立たない扉の方へと
案内されてゆく‥
中には、きらびやかに
着飾ってはいるが、
どことなく精気の無い
蒼白い肌の婦人も居た。
運搬作業員は全ての麻袋を
降ろし終えると、一つの
黒いケースを受け取り
その場から走り去った。
案内されて扉の中に消えた
紳士淑女達は、恐らく
普通の人間ではない。
倉庫内で何が行われて
いるかは、おおよそ見当
がついた。
翌々日、
ターニャはブティックで
黒のドレスや、靴、
アクセサリーを仕入れて来た。
『ターニャ‥まさか君は‥』
『そうよ‥。そのつもりよ‥。
あの倉庫の中で何が行われて
いるか調べるの‥。』
『無茶だ!君ひとりで
潜入するのは危険過ぎる!』
『貴方が潜入するより
ずっと安全よ。
これ、留めて下さらない?』
別室で正装に着替えた
ターニャは私に背中の
ホックを留めるよう
背を向けた。
私は彼女の言うがままに
ぎこちない手つきで
ホックを留める‥