【探偵ピート・ジャンセン】


その場にスッと立ち上がると、
オークショナーの男に向かって
わざと毒づく‥


『あんな粗悪な娘を出品する
とは‥

噂を聞いて、やって来てみた
けれど‥

どうやら見込み違いだった
様だわ‥ 』


そう言うと、牙を剥き出し、
シュ―っ!と言う声をあげて
オークショナーに向かって
威嚇して見せた。


オークショナーの男は忌々し
そうにターニャを見ている。


ターニャは更に芝居を続けた。


呆れた様に両手を広げ

『純度の高い血ですって?

お前は気付いていない様
だけど‥

あのロシア人の娘はステージに
立つことに恐怖心があり、

夜ごと安定剤を服用して
いたのよ!

私が純度の高い血を求めて
ロシアを旅していた頃‥

私はバレエ団に目を着けて
様子を窺っていたの‥

あの娘が毎回、隠れて薬を
服用しているところを私は
見ている!!  』


『貴方は気が付かなかったの?

‥可哀想に‥。 』


さっき試飲したヴァンパイアを
指差し、哀れみの眼を向け
ながら更に続けた‥



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