【探偵ピート・ジャンセン】
『…そうか
そう言う事か‥
お前は完全なる闇の申し子
にはなっていないのだな‥。
お前のその血を飲めば
太陽の祝福を承けられるやも
知れん。』
クラウスはニヤリと笑みを
浮かべていたがその眼は
鋭くターニャを捉えていた。
『永遠の孤独に何の意味が
あると言うの?
誰かを殺めて‥』
『うるさい!黙れ!
そんなに死に急ぐならば
今すぐその望み
叶えてやろう!』
声と同時に迫り来る
気配を感じたターニャは
瞬時にその場から飛び退いた。
陽射しの下に居る限り、
奴は追って来る事は出来ない‥
此処では午後3時には
陽が翳ってしまう‥
兎に角、何処かに身を
隠さなければ‥
何処をどう走ったのか?
再びターニャはその姿を変え、
豹の如く人の行き交う喧騒の
中へと身を投じた。
脚に滲む血がアスファルトに
ポタポタと痕跡を残す‥
このまま部屋に戻る訳には
いかない。
血痕を辿られ、アパートの
場所が判ればピートまで
危険に晒す事になる‥
喉の渇きがターニャの
傷の治癒を遅らせている‥
沸き上がる血への欲望を
抑えながら、ターニャは
夢中で駆けた。