【探偵ピート・ジャンセン】


血を…

傷口を再生させなければ…

ターニャ…

貴女なら出来るはずよ…

もうすぐ着くわ…

耐えるのよ…

理性に語り掛けながら
尚、走り続けた。


ターニャはやっとの思いで
血液バンクに辿り着く事が
出来た。


幸い今朝とは血液バンクの
受付担当者も違っていた。

極力、平静を装い登録
されている病院名を告げると
むやみに話し掛けられない
ように緊急のオペである旨も
告げた。


『ご苦労様です…。
どうしました?大丈夫ですか?
顔色が…真っ青だ…!
少し此処で休まれた方が…。』


窓口の男がただならぬ様子に
気が付き、心配そうに顔を
覗き込んだ。


『いいえ…けっこうよ…。』


『しかし…。

…病院へは代わりの者を
行かせましょう。
さあ、奥でどうぞ休んで
下さい。』


手を貸そうとした男の手を
振り払い


『触らないで!
私なら…大丈夫よ…』


不意に男がターニャの脚に
視線を移した。


『怪我をしているじゃないか!
手当てしよう。
さあ、こっちへ!』


『いいから黙ってパックを
渡しなさい!!』


《さもないと貴方を殺す事に
なるわ…》

ターニャは心の中で呟いた。



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