【探偵ピート・ジャンセン】
ピートの眠る部屋を出て数歩、
歩き出した時、不意に足元に
何かが当たる感触を覚え、
ターニャが足元を見下ろした。
手に取ってそれを見てみると
それは鈍い光を放った銀の
小さなロケットだった。
チェーンが切れて、落ちた
のだろう。
蓋が開いて中の写真が見える
状態になっていた。
小さな写真の人物は、女性
だった。
ダークブラウンの髪、
瞳はヘーゼルの穏やかな笑みを
たたえた優しそうな印象の
女性だった。
ロケットの蓋側には文字が
刻まれていた。
リタ・ジャンセン
リタ…
ラストネームがピートと
同じだ…
ロケットに入れるくらいなの
だから、きっと彼の大切な
女(ひと)なのだろう。
だったら尚更、彼女を
悲しませるわけにはいかない。
ロケットを閉じるとターニャは
傍らのテーブルにそれを
静かに置き、そのままキッチン
へと向かった。