【探偵ピート・ジャンセン】
暫しの沈黙の後、
ピートが、その手にロケットを
受け取ると、ゆっくりとした
口調で語り始めた。
『・・・済まない。
取り乱して…
彼女は私の妻だった女性だ…。
6年前まで私はデトロイト
市警の警官だったんだ。
当時、私は主に少年犯罪を
取り締まる課に所属していて
彼女は保護監察処分の少年を
預かる更生施設の保護監察員を
していた。
窃盗、傷害、殺人…
彼女の施設では常時、数人の
少年が収容されていて、
少年達に事件当時の状況を
克明に再現させて、その後、
少年達、各々に
ディスカッションさせる
と言うプログラムを
組んでいた。
効果は目に見えて出所した後の
再犯率は激減していた。
当時、私は犯罪を犯した少年を
そこに送り込む担当だった。
そこで彼女と知り合ったんだ。
幾度も顔を会わせる内、食事を
したり、プライベートでも
彼女と過ごす時間が増えて
いつしか彼女を人生の
パートナーとして考える様に
なっていた。
その後、とても自然な流れで
プロポーズをして、彼女は
それに応えてくれた。
暫くして結婚後、彼女は
仕事を辞めた。
それから3年後の事だった…。
ある日、スーパーに買い物に
出掛けた彼女が、そこで
起きた強盗事件に巻き込まれ、
人質にとられた…。』