【探偵ピート・ジャンセン】
『そこで、私の横に居た警官が
咄嗟に少年に向けて…
一発の銃弾を放った。
それが…少年を庇った彼女の
左胸に命中して…
気が付いた時には既に彼女は
床に倒れていた。
私は彼女が撃たれたと知り、
無我夢中で彼女の元へ
駆け寄った。
最期に微かな声で彼女が私に
尋ねたのは犯人の少年の
安否だった。
少年が無事だと判ると彼女は
安心したらしく、微笑んで
「彼を助けてあげてね…」
そう言って息を引き取った。
それまで彼女は、凶悪な犯罪を
犯した少年が更生して行く姿を
幾人も見て来た。
だから退職したあの時点でも
自ら人質となり、説得を
試みたんだろう…。
一番側に居て、一番護るべき
私が彼女を護ってやれ
なかった…。
すぐ傍に居て…
何もしてやれなかったんだ。』
ピートが己の拳を幾度も
壁に叩きつけながら、
これまで誰にも語る事の
無かった思いを吐き捨てた。
『もう止めて!
貴方のせいじゃないわ…。』
ターニャが堪えきれず彼の
傷付いた拳を制した。