【探偵ピート・ジャンセン】
蠢く者



一方、
ターニャを捕り逃した
クラウスは、彼女の事を
一切、ルシアスには
話さずにいた。


ターニャの存在を明かせば、

自分よりも先に太陽の祝福を
承けられるであろう血を

独り占めされるに違いない。

容易に察しがつく。


それに昼夜問わず、
行動出来る様になれば

最早、ルシアスの力など
恐るに値しない。


クラウスは今、まさに
ギリシャ神話さながらの

王ウラノスを失脚させた
クロノスになろうと
していた。


クラウスはあの日、
ターニャを逃がしてからと
言うもの、

これ迄に増して、
残忍な狩りの仕方をした。

わざと痕跡を残し、
あの倉庫内にあった

オークショナーの様な無惨な
骸を残したり、

時には、ターニャにしか
解らない様なメッセージを
残したりもした。



《太陽の祝福を‥》



すべてはターニャを
誘き寄せる為のもので
あった。


多発する猟奇的な事件に
既に警察も動き出していた。


しかし、犯人の痕跡はいずれも
残っておらず、捜査は難航
していた。



< 83 / 97 >

この作品をシェア

pagetop